自分の相続分・遺留分を請求したい

遺留分とその侵害

遺留分とは、法定相続人に最低限保証された相続分です。この制度は、不公平な遺言により生じた不均衡を是正するために設けられています。遺留分を有するのは、配偶者、子ども、直系尊属(子どもがいない場合)です。

遺留分侵害額請求権とは、遺留分を侵害された法定相続人が行使できる権利で、遺留分相当額の支払いを求めるものです。遺留分が侵害されたことを知った日から1年、または相続開始から10年以内に行う必要があります。

遺留分侵害額請求の手続

1. 相続人と相続財産の調査

相続人の確定と相続財産の調査を行い、遺留分の額と遺留分侵害の額を確定します。

2. 話し合いによる遺留分侵害額請求

調査後、遺留分を侵害された方は、贈与または遺贈を受けた者に対し、遺留分侵害の限度で財産の返還を請求します。話し合いで解決を図りますが、不成立の場合は裁判所に調停を申し立てます。

3. 内容証明郵便の送付

話し合いで合意に至らない場合、内容証明郵便で遺留分侵害額請求を行います。これにより、請求の日時と内容が正式に記録されます。

4. 遺留分侵害額の請求調停

内容証明郵便の後、相手方から反応がなければ、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。

5. 遺留分侵害額請求訴訟

調停が不成立の場合、裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。裁判所が最終的な判断を下します。

遺留分に関する法改正

これまで、遺留分に関する請求は、遺留分減殺請求と呼ばれていました。旧法下では、遺留分減殺請求権の行使によって共有状態が生ずるとされており、事業承継の支障になっているなどの問題点がありました。

しかし、平成31年の民法改正により、遺留分侵害額請求権が創設されました。

これにより、遺留分侵害額請求権を行使すると、金銭債権として請求が出来るようになりました。つまり、遺留分に相当する金額を、すべてお金で要求することができ、共有状態に当然なるということを回避できるようになりました。

この制度は、従前から生じていた事業承継でも株式などが共有状態になってしまう問題を回避できるメリットがありますが、逆に預貯金の金額が少ない相続で、遺言によって全部の遺産を特定の相続人に相続させてしまうと、受け取った相続人は大きな金銭的負担を負う可能性もあります。

このような問題を避けるため、遺言を残す際は、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。

逆に、遺留分減殺請求権を有する側にとっては、特定の相続人がすべてを相続するような遺言を残されてしまっていた場合でも、現金での遺留分相当額の支払を求めることで、相続問題を早期に解決できる可能性を有するというメリットがあります。

弁護士に依頼するメリット

遺留分侵害額請求に弁護士を依頼するメリットは多岐にわたります。

1. 専門的な知識と経験の活用

弁護士は遺留分に関する専門的な知識を有し、複雑な計算や法的な手続を正確に行うことができます。特に遺留分の計算は、個別具体的なケースでは複雑になり得るため、専門家の助けが重要です。

2. 時効の管理と迅速な対応

遺留分侵害額請求には時効があり、期間内に対処する必要があるため、弁護士に依頼すると迅速な対応が期待できます。

3. 交渉力

弁護士が介入することで相手方に強い印象を与え、交渉において有利に進めることができます。また、相手方が弁護士を立てている場合には、法律的な知識を有する弁護士による対応が不可欠です。

4. 法律上妥当な遺留分の主張

弁護士は遺留分の計算と交渉を行い、法律上妥当な遺留分を主張します。これにより、遺留分侵害額請求の正当性を高めることができます。

遺留分侵害額請求の具体的な計算例

遺留分の具体的な計算方法は以下の通りです

  • 直系尊属のみが相続人の場合:3分の1
  • その他の場合(兄弟姉妹以外の相続人):2分の1
  • 相続人が複数人の場合:法定相続分×上記の割合

事例1

例えば、母親が3,000万円の財産を残し、遺言で全額を慈善団体に遺贈した場合、長男のみが相続人なら遺留分は1,500万円(二分の一)となります。長男と長女が相続人の場合、長女の遺留分は750万円(総体的遺留分の二分の一×法定相続分の二分の一)になります。

事例2

例えば、父親が2,000万円の預貯金と、1,000万円相当不動産を残していて、相続人は2人兄弟だけだったとしましょう。そのような状況で、兄にすべての財産を相続させるという遺言が残っていた場合、遺留分侵害額請求権を有する弟は、1,500万円の金銭支払請求を兄に対してできるということになります。

遺留分の時効に注意

遺留分には期間制限が2種類あります

遺留分には、

  1. 遺留分の侵害を知った時から1年の時効
  2. 相続が開始してから10年の除斥期間

という期間制限があります。

いずれも、成立してしまうともう遺留分侵害額請求権が行使できなくなるという点は同じですので、遺留分を有する相続人は特に注意が必要です。

1年の時効

「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年が経過すると、遺留分侵害額請求権は消滅時効が成立します(民法1048条)。

「相続の開始を知った時」とは、相続の発生、つまり被相続人が死亡したことと、自分が相続人であることの両方を知った時を意味します。

また、「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったとき」とは、遺留分の金額が実際に侵害されていることを知った時をいいます。つまり、遺言の存在を知っていただけでなく、その内容が自分の遺留分を侵害するよう内容のものであること(たとえば特定の相続人に全部の遺産を相続させるなど)であることを知った時から数えて、1年間で時効が到来するという意味です。

これらが成立しているかを巡って、争いになることあります。

10年の除斥期間

10年の除斥期間は、相続の発生を知っているかどうかにかかわらず成立してしまいます。

つまり、機械的に相続が開始されてから10年が経過した時点で、遺留分侵害額請求権は行使できなくなるということです。

時効が成立しそうになっていたら

遺留分侵害額請求権の時効が成立しそうになっていたら、それを止める必要があります。

具体的には、配達証明付の内容証明郵便で、遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をする文書を送付するのが望ましいといえます。

遺留分侵害額請求の時効は1年と短いですから、遺留分が侵害されているかもしれないと思った時点で、早めに弁護士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。

なお、遺留分侵害額請求権を行使する旨の郵便を送っても、そこから5年間で金銭請求権自体の消滅時効にもかかってしまうため、文書を出したあとでも早めに対応を心がける必要があります。

まとめ

遺留分侵害額請求は、相続人の遺留分権利を守るための重要な手段です。遺留分の侵害を立証し、正確な侵害額の算定を行うことが成功のカギです。複雑な手続が必要なため、弁護士に相談することが推奨されます。また、時効に注意し、適切なタイミングで手続を開始することが重要です。適切な手続により、遺留分の権利を守ることが可能になります。

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