遺留分侵害額請求の流れは、大きく分けて上記のとおりです。
以下に詳しく説明を記載します。
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遺留分の調査
まず、相続財産がどれほどあって、遺留分の割合がどのくらいなのかを調査します。
遺留分の割合は戸籍謄本などから相続人を調査することになりますが、相続人の数が何十人もいる場合もあり、そのような場合は1年の消滅時効に間に合わないことがあり得ます。
また、相続財産も調査され、遺留分の金額が分かっている方がその後の手続が進めやすくなりますが、不動産などの評価が難しい財産が遺産に入っていると、必ずしもすぐに調査できるわけではありません。
そのような場合は、まず遺留分侵害額請求権があることが明らかであることと、遺留分侵害額請求を行う意思表示を、先に通知するという方法があり得ます。
遺留分侵害額請求の意思表示
遺留分侵害額請求の意思表示は、一般的に内容証明郵便を用いて行います。
形式的には口頭でも有効であると言われていますが、後から立証することが困難ですので、おすすめはしません。
意思表示の内容は、具体的に相続財産や遺留分侵害額請求の金額を記載する場合もありますが、1年という消滅時効を見据えて、遺留分侵害額請求の意思表示をすることを先に通知するという方法があり得ます。
遺留分に関する交渉
意思表示が内容証明郵便で到達した後、交渉を行うことが一般的です。
遺留分侵害額請求後の交渉を、裁判所での訴訟にせずに行うメリットとして、単に金銭請求だけでなく、形見の貴金属や不動産といったものを分けてもらえるように交渉することができることなどが考えられます。
遺留分侵害額請求をする際に、金銭以外に得たいものがある場合は、まず交渉から入るのがよいといえます。
ただし、その前の意思表示が正しく行われていなければ、そもそも交渉やその後の手続が有効に行えない可能性もあります。そのような心配を排除するため、遺留分侵害額請求をする時点で弁護士に依頼される方が、最近は多いです。
また、合意書を締結するにしても、間違いのない文書にするため、弁護士に依頼される方が多いといえます。
遺留分侵害額の請求調停
従来、遺留分に関する請求が遺留分減殺請求権と呼ばれていたころは、金銭以外も含めて協議する必要がありましたが、遺留分侵害額請求権となってからは、一義的には金銭請求のみでこれを行うことになりました。
もっとも、遺留分侵害額請求訴訟を最初に提起することは原則として認められておらず、調停を先に申立てることとなっています(調停前置主義)。
これにより、交渉と同様、引き続き金銭以外の話し合いをすることができるようになります。
もっとも、裁判所での調停手続あるため、特に請求された側に代理人がついている場合などは、特別受益や遺産の評価など、法律上の問題が論点となることもあります。
そのため、調停の段階から弁護士を依頼する方も多くいます。
遺留分侵害額請求訴訟
調停も決裂した場合や、調停を申立てるまでもないほど支払われないことが確実である場合、訴訟を提起する方法で遺留分侵害額請求を行います。
訴訟の提起先については、訴額が140万円を超えていれば地方裁判所、そうでない場合は簡易裁判所となります。
訴訟となった場合、いずれにせよ証拠に基づいた主張・立証が必要になりますので、弁護士に依頼される方がほとんどであるといえます。
そして、訴訟が続いていくと、判決によって解決するだけでなく、和解によって支払が決まることもあります。 なお、判決が出ても被告が支払わない場合などは、銀行預金口座の差し押さえなどの強制執行を検討する必要が出てきます