遺留分を請求された

遺留分とは

遺留分とは、遺言などによっても奪うことができない、最低限の相続分のことをいいます。

たとえば、遺言によって多くの相続分をもらい受けていても、必ずすべてを取得できるというわけではありません。

遺留分が侵害されている場合は、遺産の一部を金銭で請求することができます。

つまり、土地や株式などが遺産に含まれているとしても、遺留分侵害額請求がなされるのは、金銭のみの支払請求で、原則として金銭のみで支払わなければなりません。

遺留分侵害額請求をされた場合に検討すべきこと

多くの場合、遺留分侵害額請求は内容証明郵便が届くことによって行われると思われます。

ただ、遺留分侵害額請求を受けたとしても絶対に遺留分を支払わなければならないというわけではなく、以下のような反論が可能な場合があります。

相手方が遺留分侵害額請求をできる相続人かどうか

まず、相手方が相続人かどうかを調査しておくとよいでしょう。

遺留分侵害額請求をされた場合でも、請求者が配偶者を名乗る人物であれば、途中で離婚しているかもしれませんし、養子を名乗る人物であれば、離縁しているということもあり得ます。

また、兄弟姉妹には遺留分には認められていませんので、兄弟姉妹が主張しているのだとしたら、その請求はできないということになります。

相手方の遺留分となる相続分や遺産の額

民法1042条1項には、遺留分の割合について以下のように定められています。

  1. 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
  2. それ以外の場合 2分の1

つまり、相続人が被相続人の配偶者と子どもである場合や、子どものみである場合は、遺留分は相続分の2分の1ということになります。

もしも請求している人が被相続人の親などの直系尊属であれば、相続分の3分の1しか請求できないところ、それ以上請求しているのであれば、争える余地が出てきます。

また、以下のように、特別受益などがあり、元々の遺産の金額をいくらと評価するのかや、特別受益があるかなどについても争うことができることがあります。

特別受益がないかどうか、遺産は総額でいくらなのか

遺留分侵害額請求をされた場合、まず遺産の総額に対して割合を計算します。

つまり、土地や株式などの、明確に価値が定まっていない遺産が含まれている場合、これらをどのように算定するかも重要な検討要素となります。

また、プラスの財産以外にも、借金が含まれている場合もあります。そのような場合には、それらの債務額をプラスの積極財産額から引いて、遺産の総額を計算します。

さらに、特別受益といって、相手方が被相続人の生前にもらっていた財産の中で、相続の前渡しといえるような資産の贈与がされている場合があります。

この特別受益の立証は一般的に難しいものと言われていますが、銀行の取引履歴などから明らかであるといえる場合は、特別受益を主張することで、遺留分侵害額請求権の金額を減らすことができることがあります。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求権は、相続の発生と、遺留分が侵害されていることを知った時から1年で消滅時効となります。

また、それらのことを知らなくても、相続開始から10年で消滅します。

特に、相続人であることを知った時期は争いになることがあります。

遺留分侵害額請求をされた場合であっても、上記のような消滅時効を書面で主張することで(時効の援用)、遺留分を免れることができることがあります。

具体的な争い方

交渉による方法

遺留分侵害額請求をされた時点で相手に代理人弁護士がついている場合でも、上記のような法的な論点があれば、訴訟になったときの見通しをお互いが立てることができるため、交渉による解決の余地が残されています。

また、代理人弁護士がついてない場合でも、感情的な調整を図ることで交渉による解決が見られることもありますが、そのような場合は、こちら側も代理人を立てない方がいい場合もあります。そのような場合は、当事務所では依頼をお勧めしないこともお伝えしております。

調停による方法

遺留分侵害額請求は、原則として調停に付されることになっています。

調停というのは、裁判所において話し合いを行うことで、裁判と違い強制的に結論が出るものではありません。

もっとも、話し合いをしてもまとまらないことが明らかである場合などは、即座に訴訟を提起することもあります。

遺留分侵害額請求では、請求された側は法律的な主張をいかに構成して冷静に返すかが重要となりますので、この時点で弁護士を依頼する方も多くいらっしゃいます。

訴訟による解決

訴訟が提起されたら、証拠によってそれぞれの主張を立証することが求められますので、弁護士に依頼することが望ましいと考えられます。

遺留分侵害額請求では、上記のとおりさまざまな論点がありえ、請求された場合であっても即座に諦める必要はないということもあります。

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