相続財産調査が必要な理由と、その方法、および弁護士に依頼するメリットについて、詳細に説明するページです。
このページの目次
相続財産調査が必要な理由
相続財産調査は、被相続人が残した財産の全体像を明らかにするために不可欠です。具体的には以下のような理由から重要とされています。
1. 遺産分割協議のため
相続人全員が遺産の内容を正確に把握することで、遺産分割協議が円滑に進行します。相続財産の調査が完了していなければ、遺産分割協議をしても、後日また遺産が発見された場合、再び遺産分割協議や調停をしなければならなくなります。
何度も面倒な手続をしなくてすむよう、遺産が多岐にわたる場合は、財産調査をされることをお勧めいたします。
2. 預金の使い込みなどの調査のため
一部の相続人が不正に預金を引き出していたり、財産を使い込んでいたりすることを明らかにします。
財産調査の過程で、上記のような相続人が知らなかった遺産が発見されることもあります。
3. 名義変更や解約手続の漏れを防ぐため
遺産の全容が把握できていないと、必要な手続が漏れる可能性があります。
預貯金についてはそのまま休眠預金となってしまうと、遺産として回収できなくなってしまうこともあり得るため、早期にまとめて調査しておくことが重要です。
4. 相続税申告の漏れを防ぐため
遺産すべてを把握することで、相続税申告を正確にすることができます。
5. 相続放棄を検討するため
相続財産調査を通して、負債の有無や規模を知ることで、相続放棄の判断材料となります。
相続放棄の期限は、被相続人の死亡と、相続人であることを知ってから3か月が原則です。遺産の調査自体に期限はありませんが、相続放棄を視野に入れると、以外と期限は短いことが分かります。
相続財産調査の方法
相続財産の種類は多岐にわたります。以下に、主な財産の調査方法を述べます。
1. 不動産の調査
法務局で不動産登記事項証明書を取得し、被相続人の所有不動産を特定する
どこに不動産があるか分かっている場合は、登記を調べることで、相続財産の状況が分かります。所有者だけでなく、共有者がいる場合は共有持分が分かったり、抵当権などが設定されている場合も、その状況が分かります。
固定資産税課税明細書や名寄帳などを確認する
被相続人の固定資産税納税通知書を見ると、殿不動産に固定資産税を払っていたかが一覧になっています。つまり、被相続人が持っている価値のある不動産がすべて把握できる可能性が高いです。
ただし、固定資産税のかからない土地については、この通知書に記載されていないため、すべて市役所等で名寄帳の発行を依頼することが必要です。
所有不動作が特定できている場合は、固定資産税評価証明書を取得しておくと、その後の分析がスムーズです。
2. 金融資産の調査
通帳やキャッシュカード、金融機関からの定期郵送物などをチェック
被相続人の銀行口座を示す通帳やカードがある場合は、相続人であれば、それを手がかりに金融機関に残高を確認することができます。
また、単に残高を確認するだけでなく、請求すれば銀行などに取引履歴明細を発行してもらうことができるので、被相続人の財産が引き出されている可能性がある場合は、必ずこれらの資料も取寄せておきましょう。
金融機関に照会を依頼し、残高証明など預貯金の全体像を把握
銀行口座が一つの銀行に複数ある場合もありますし、複数の視点にわたる場合もあります。そのため、銀行家の全支店に対して口座を確認する方法(全店照会)を行うと、漏れが防げます。
3. その他財産の調査
株式、国債、社債、投資信託などの金融商品
株式については、株主総会の招集通知が郵便で届くことがあるので、それらの郵便を確認します。
また、証券口座がある場合は、証券会社から報告書が送られてくることがあります。もっとも、最近はネット証券会社も多く、報告書も電子化されている場合があるので、そのような場合は「証券保管振替機構」へ「登録済加入者情報」の開示を求める方法で、どの証券会社にどのような株式をもているのかが分かります。
事業用財産、貸付金、自動車、貴金属、家財道具など
その他、自動車や貴金属などの動産も相続財産となり得ます。
もっとも、家財道具などは価値のあるものとみなされないことも多く、特注品などの特別なもののみ、相続財産とされることが多いようです。
4. 借金の調査
相続財産はプラスのもの以外にも、マイナスがあり得ます。
仮に相続放棄をしないと、被相続人に借金がある場合は、借金も相続することになってしまいます。当然、プラスの財産よりも借金の方が多ければ、相続によってむしろマイナスが増えるということになりますから、借金がある可能性がある場合は、相続放棄ができる期間内に、財産調査を終えておくことが必要です。
借金があるかどうか分からない場合は、まずは郵便など届く手紙を確認しましょう。督促状などが届いていることをきっかけに、借金が明らかになるかもしれません。
また、CICなどの信用情報機関に、借金の情報を開示請求することもできますし、前述の不動産の登記情報から、抵当権を手がかりに借金の情報を探したり、銀行預金の引落履歴から消費者金融の利用履歴が分かることもあります。
弁護士に依頼するメリット
専門家、特に弁護士に相続財産調査を依頼することには以下のようなメリットがあります。
- 専門知識の活用: 弁護士は法律の専門家として、複雑な相続財産の調査を正確かつ効率的に行えます。
- 手続の簡略化: 調査後の複雑な手続も弁護士に委ねることができ、時間と労力を節約できます。
- 公平な遺産分割のサポート: 遺産分割における公平な方法を提案し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
- 相続税の専門的アドバイス: 相続税に関する専門的な知識を活用し、税金の適正化を図ることが可能です。
相続財産調査の具体的な流れ
相続財産調査は、以下のステップで進められます。
- 被相続人の家庭内で通帳や重要書類の検索。
- 被相続人の住んでいた地域の役場、法務局での書類取得。
- 不動産の価値を固定資産評価証明書などで確認。
- 金融機関での預貯金、保険契約などの詳細な調査。
- 不動産や株式などの財産を適切に評価。
- 相続税の申告に必要な財産評価を行う。
相続財産調査の注意点
- 期限の管理: 特に相続税の申告には期限があるため、迅速な調査が求められます。
- 漏れのない調査: 隠れた財産や未知の負債がないか、入念にチェックする必要があります。
- 正確な情報収集: 間違った情報に基づく調査は、後のトラブルの原因となることがあります。
まとめ
相続財産調査は、相続プロセスにおいて最も重要なステップの一つです。この調査を通じて、相続人は遺産の正確な把握を行い、適切な遺産分割や相続税申告を行うことができます。また、専門家、特に弁護士に依頼することで、調査の正確性が高まり、手続がスムーズに進むと同時に、様々な法的問題に対応することが可能になります。
相続財産調査は複雑かつ専門的な作業であるため、専門家の助けを借りることが賢明な選択と言えるでしょう。